CHALLENGE挑戦する風土

新しい働き方への挑戦

飲食業の働き方を変える「未来ワークデザイン部」

個人が叶えたい夢を語り、その夢を組織としてサポートする。 「未来ダイアログ」「労働時間選択制度」の導入

ファイブグループは健康経営を掲げ、働く環境づくりを絶えず磨き続けてきた。Great Place to Work Japan(GPTWジャパン)社が実施する「働きがいのある会社」ランキングでは、6年連続で飲食業界No.1の評価を獲得。人事部長として「働きがい」を生み出すマネジメントシステムを牽引してきた光藤雅基が、2020年に立ち上げたのが「未来ワークデザイン部」だ。働き方改革が進み、個人の働き方が多様化するなかで、会社と個人の関係の在り方も変化していく。光藤が目指すのは、企業に属しながら自己実現できる「個」を尊重すること。自己実現の選択肢をより多く創造すること。そこで、対話を通じて自分の未来を考えるきっかけとなる「未来ダイアログ」、そして個人が叶えたい夢やライフスタイル、ライフステージに合わせて労働時間を3段階から選ぶことのできる「労働時間選択制度」を導入した

どんな未来を歩んでいきたいのか。それを実現する働き方を自分で選ぶ。

「飲食業界を働きがいのある業界にしたい」。それが、光藤がファイブグループで働く理由であり、追い続けてきたことだ。「働きがい」に注力し、その環境をつくり成果を上げてきた。でも社会での飲食業界のイメージはなかなか変わらない。新卒採用でも、飲食業がなかなか学生の選択肢に入ってこない状況に直面した。アルバイト経験をしている人も多く、楽しく仕事をしてきた人もいるはずなのに、いざ就職先を考えるときになると、飲食業界が視野から外れてしまう。それはなぜなのか?

「一言でいうと、夢のある未来が描きにくいということ。入社3年後に目指すのが店長だとして、その店長が憧れの存在でなければ、自分もなりたいとは思いませんよね。裏を返せば、店長が夢を持って行動し、キラキラ輝いている存在なら、飲食業のイメージが変わる。人が楽しいと感じるときは、主体的にやることを選び、責任と覚悟を持って行動しているときだと思います。だから、そんな働き方がもっとできる会社にしたい。そんな想いで未来ワークデザイン部を立ち上げました」

企業に属しながら、個人が尊重されていく働き方をつくる必要がある。

飲食業界は参入障壁が低いからこそ、差別化するためには人の魅力を圧倒的に高める必要がある。そんな業界であるにも関わらず、旧態依然とした働き方が続いている課題感が光藤にはあった。

「近年はSNSも発達し、企業に属していなくても、個人で自己実現ができる時代です。ということは、個人と企業の関係がどうあるべきかが問われることになる。企業に属しながら個人が自己実現できる働き方を尊重し、自己実現のための選択肢をより多く創造していく。そんな会社であることが求められます。その足がかりとして導入したのが『未来ダイアログ』です。上長もしくは斜めにいる上位職者と対話する機会を設け、自分の未来を語ることで、好きなことや大切にしていきたいこと、今後やりたいことを発見するきっかけとなります。一方で上長にとっても、部下の知らなかった一面を発見し、職場や働き方を改善する気づきの場となります」

それぞれの未来と人生に寄り添った、多様な選択肢が創出できる制度。

「未来ダイアログ」で自分の未来を描き、やりたいことが見えても、適した働き方が選べなければ、夢を叶えるために行動を変えることは難しい。そこで支えとなるのが、「労働時間選択制度」だ。現在は215時間、180時間、140時間の3段階から選ぶことができる。労働時間によって給与は異なるが、ライフスタイルやライフステージに応じて自由に選択できることで、個人の希望をかなえ無理のない働き方を可能にした。

「自分の未来を意識するようになると、当然ながら働き方が変わります。バリバリ働いて稼ぎたい人がいてもいいし、夢を追いかける時間や勉強時間を確保するために短時間を選んでもいい。出産や育児をする時期は時短を選び、こどもが大きくなってから労働時間を増やすというプランも考えられる。労働時間を選べるようにすることで、それぞれの人生に寄り添った多様な選択肢が創出できるようになりました」

優先順位が明確になり、やりたいことに時間が費やせるようになった。

「串とあて巻き居酒屋大悟」の林夏彩(2019年新卒入社)は、家庭の事情と体力的な問題から一時は転職を考えた。しかし直属の上長はじめ複数の社員との対話を通じて、労働時間を含めた新しい働き方が選択できることを知り、同時に、目指したい自分の未来を明確にすることができた。現在は180時間を選択し、オンとオフの時間をうまく使い分けている。

「働き方を変えられるとは当初思っていなかったので、何でも相談できる環境はありがたいです。自分がやりたいことを諦めなくていい。意識が変わり行動の優先順位がつけやすくなりました。体力的・心理的なストレスも減り、楽しく働いています。今後は装飾関係で社内の第一人者にもなりたい。シフトをなるべく固定にしてもらうことで、オフの予定が組みやすくなり、勉強や、お店で材料を探す時間もつくりやすくなりました。将来はサービスコースの女将になるという本気で目指したい目標も見つかりました」

育児中でも無理のない労働時間にすることで社員として働くことができる。

「町田っ子居酒屋とととりとん」の河合香織は、音楽活動と並行しながらファイブグループの店舗で長くアルバイトを経験。出産・育児を経てから仕事を探すとき、好きな店舗に戻って働きたい気持ちがあった。でも労働時間や時間帯に制限があるから難しいと、店長に相談したところ、時短制度ができたことを知り、140時間の時短社員として復帰することになった。

「お客様がいらっしゃる開店前の時間をメインに、仕込みと調理業務を担当しています。こんな働き方ができるとは正直思っていませんでした。好きな店舗でまた働くことができて嬉しいです。最近はメニュー制作やデザインにも携わらせてもらっているので月140時間ではギリギリなときもあります。もっと働きたい気持ちが芽生えてしまいますが、こどもが大きくなったタイミングなど時期を見て柔軟に労働時間を選んでいきたいです。将来は自分のやりたい料理のこだわりを見つけながら、その為の力を身につけていきます。

対話を通じて、新しい発想や考え方を知り、人との関係性が深くなった。

「未来ワークデザイン部」の取り組みは、現場のマネジメント層にはどのような影響を与えているのだろうか? B級グルメ事業本部本部長の黒澤貴行は、「未来ダイアログ」を通じて、今までなかった新しい発想や考え方を知る機会となり、有益な気づきを得ているという。

「現場で話を聞くことはこれまでも大事にしてきましたが、仕事以外の話をする機会はあまりありませんでした。その人が好きなこと、やりたいこと、どんな未来をつくっていきたいかを知ることで、ただお店でつながるだけの関係じゃなく、その人の人生とつながっていく感覚があります。間違いなく関係性が深くなる。『未来ダイアログ』そのものは個対個で行いますが、その内容は上長の間で共有しています。その夢をどうすれば実現できるか、チャレンジできる環境づくりを組織全体で考えることになるので、当人の夢を叶えやすくなる。組織に属するメリットも明確に表れます。労働時間を選ぶときには、必ずその理由があります。人の背景を知ることで、本質的な解決もできるし、発想の幅が広がる。次につながる多くの気づきを得ています」

個人が本音の想いや夢を語り、その夢をサポートする会社になっていく。

光藤が常に意識しているのは、ファイブグループが「21世紀を代表する飲食カンパニー」となること。その答えが出るのはまだ先だが、飲食業での働き方が論点のひとつとなることは間違いない。

「コロナ禍はみんなが立ち止まる期間となりました。でも逆境を前向きに活かして、自分とも会社とも向き合う時間にすることができた。もともとファイブグループにはいい文化がありましたが、『未来ダイアログ』で個人が本音の想いや夢を語り、その夢をサポートしようと周りが動くことで、現場からどんどんよくなっている手応えを感じます。でも登山でいえばまだまだ一合目。この先どこまで登れるかは、みんなの主体的な行動にかかっています。もっといい未来が描けるよう、全員で夢を語り、走って行きます」